利便性と多様性の先

今年も残すところ、あと1か月となりました。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

10月にミラノへ渡伊してきたのですが、その際に強く感じたのは、
日本人は、良くも悪くも”慣れ”と”安定”と”定着”を混同して平和を着地点にする癖があるのでは?と、
私もそのDNAを持つ日本人の一人でもあるのですが、
帰国後、マスクに検温が続く生活に戻った時により一層、強烈に窮屈さを感じましたね。

勿体ない精神を通り越して、「ナニコレ?精神」が芽吹いたほど。

海を渡ると、固定観念というものは、あるようでないものが、
人間でしょ?ワールドでしょ?と、渡航する度、錯覚し、帰国する度、スタンスを省みる事ができます。

感覚的に、この人押し強すぎるな。。胡散臭いな。。、口だけ番長系?
いや、見かけによらず、意外と丁寧な仕事する系?
などと、感覚を図り、自身の基準を客観視もできる機会にもなるので
identityを失わない限りは、面白いの一言に尽きます。

もしかしたら、人によっては予想通りにならないこと自体を、ストレスとなる方もいるかもしれません。

選択肢が大きく広い事がストレスに感じる人もいますし
選択肢が小さく狭い事をストレスに感じる人もいるという訳です。

ですので様々な価値観を持つ人が集まる所には、
ある程度の規律があると、過ごしやすい人もいるのは理解していますし、
そのある程度の規律さえ、窮屈に思える人もいる人がいる事も分かります。
許容範囲は、人によってさまざまですので。

ダイバーシティーが浸透していく中、思考を柔らかく持つことも大切。
とはいえ、私たちの現場は日本がメインです。

さて、流れの早い市場の中、不動を追い求め・探す人も少なくは無いと思います。

作れば売れる時代も終え、個の時代となり、新たな方程式を探すかのよう、
短いサイクルで「スクラップ&ビルド」を繰り返している企業や事業自体も多くみられます。

私自身、デジタル生活下の価値観を観察し発見する中で、
様々な場面で新しく面白いサービスを目にします。
最近は、ニッチな市場に向けた「痒い所に手が届く」サービスが増えた様に感じます。

例えば、雑務だけを請け負ってくれるサービス。

書類作成や、動画の文字起こし、SNS投稿やHP更新など、
意外とフォーマットがあれば出来るお仕事。
あとは、日常のルーティン業務の自動化・効率化をしてくれるサービスなど。
”血の通っていない仕事”、といったらそれ迄ですが、
ある程度フォーマットさえあれば誰が行ってもクオリティは変わらない、といった仕事の類です。
別名「AI代行業務」といったポジションに属するのかもしれません、が、
それらを一括で引き受けてくれるサービスが、ここ最近、急激に増えて来ているように感じます。

また、時間確保における費用対効果については、常に興味があります。
アワーレイトを主軸とするデザイン業界にいるからこそ、
この真逆に位置するがゆえ、AI的サービスが魅力的に映っているのかもしれません。
利用する事でどれほど価値観が変わるものなのか?と。。

実際、事業内でサービスを利用し、要素を分析し、利点を事業へ学び入れる事も日常茶飯事です。

一方で、
少し危惧するサービスも有ります。例えば、スマホ内アプリで完結するサービス。

先日、登壇させていただいたデザインセミナーでも、
「ポイントを押さえればアプリでデザインはできます」と、お勧めアプリをいくつか紹介しました。
眉を顰めたい程、豊富なテンプレートを搭載したアプリがたくさん出てきています。

デザイン会社としては正直なところ、便利になって嬉しい様な、悲しいような、焦るような、複雑な心境です。

アプリの充実化に伴い、誰でもデザインが出来る時代にがやってきているのですから。
(良きアプリを入手しては、デザイン業界泣かせのアプリ..と心では叫んでおります)

特にその危機感は今年、オンデマンドのデザイン講師業で痛感しました。

授業で生徒が使用するディバイスはiPad、利用するツールは全て無料アプリ。
提出物も作成データを指定サーバーにアップロードする形式で行います。

講師側としては、生徒の顔や声すら知らず。
提出物を通して、大よその人となりを掴みつつ、課題を採点・評価、フィードバックを行います。
そして生徒は単位を取得する事ができるという、通信講座の様な新しい授業形式です。
正にこの時代、生徒の中にはユーチューバー活動をしている生徒も。
テスト課題は動画提出もOKというと、
作品のプレゼン動画をしっかりと創り込み、動画を提出する生徒もいました。

最近のアプリは、そのまま印刷発注まで出来るものもあり、
学園祭に使用するチラシを制作するツールとしては、十分に機能を備えています。
生徒に教えながらデザインは可能性が無限なので面白いと再確認もするのですが、
同時にデザインの価値について深く考えるチャンスにもなりました。

この進化するアプリ市場は、個の時代において「ノウハウ」も覆されます。
これはデザイン会社としては危機なる時代とも云えます。

私たちは、アプリには生み出せない、付加価値のあるデザインが提供できなければ
われわれの存続の意味もありません。
その為、日々情報にアンテナをはり、技術を磨き、学び続けなければならないと考えています。
そして、常にトライアンドエラー・事業研究と実践を繰り返しする姿勢を忘れず
貪欲に新しい技術を取り入れるよう、スタッフにも日々叱咤しております。

市場が多様化し、かつ利便性を兼ね備えたものですら、即日現れては明日には消失する時代。

その様な中、全てを取っ払った時、最後の残るのは「強い意志」だと考えています。
別名「欲」とも言えますでしょうか。
多様性と利便性を追求した先、意志の無いものは淘汰され
強い意志をサポートする快適なサービスが残ると思います。

そしてこの先々、自動化が進み更に便利な世の中になったとしても
人間の行為として不変であることは、「最終決断」をすること。
これだけは、意志のある人間にしか出来ないことだと、肝に銘じております。

意志は、人間の象徴だと考えていますし、
意志の無い人からは、何も始まらない。

私たちは、人間らしさの骨頂でもあるこの「お客様の意志」に
着火できるサービスを提供し続けられるよう、
これからも何事にも貪欲に前進して参ります。

今後も、変わらぬお付き合いの程よろしくお願い致します。

長文にお目通しいただき、ありがとうございました。

石崎