習慣と文化

つい先日、お茶席で”落とし文”の主菓子をいただいたばかりですが、
梅雨も明け、山開に続き海開の季節がやってまいりました。

春の柔らかい風の抜け感とは少し違った、爽やかで心地の良い空気感です。
今年もいよいよ夏目前です。

季節の変わり目、
無意識のうちに、暑くなると冷たいモノを、寒くなると温かいモノを口にしていませんでしょうか。
口にする食物で体内温度を適温に保ちたいと感じるところも、
四季がある日本だからこその、習慣に近いところなのかもしれません。

その「習慣」という面白さ。
先日、そんな面白さを学べる歴史博物館へ行ってきました。
千葉県佐倉市にある、国立民俗歴史博物館、通称”歴博”です。

ここは、美術館の要素だけではなく、歴史や研究といった分野からの視点を取り入れた博物館で、
大学の研究機関でもあります。
一番面白いと感じたところは、民俗学という分野から近代の日本人を研究している点。
日常生活、習慣化された行事、風土に伴う思考、時代と共に移行する価値観。
こういった目に見えない日本人の日々の蓄積を言葉として定義し、展示物として可視化されることで、
自分たちの民俗を客観視でき、またそれらの触りについて知る事ができます。

中でも興味深かったのは、消費文化と女性、理想のスタイル=痩身といった、
日本人特有の美の価値観で女性の消費行動を取り上げていたところ。
コーセーの化粧品が年代別に並んでおり、当時のアメリカンビューティーにあこがれる女性のハートを射止める為の広告表現が多くみられました。
1970年代ごろから、「黒い瞳はお好き?」というコピーを始め、和の美が追求されるようになったそうですね。
その中でも面白かったのは、焼けた小麦肌のファンデーションの宣伝に、もんたよしのりを起用していたこと。
変わらず現代にも継承されているんだと腑に落ちた部分でもありました。
また、三越のおせち料理の陳列は当時の時代背景がひしひしと感じ取れました。
今はあまり手に取る事が少なくなってきた雑誌ですが、婦人之友、主婦の友、家庭画報などが
主婦層のトレンドを発信して新しいライフスタイルを創出してきたということも。

その他、結婚観の変化、核家族化によるインターネットを情報源とする子育て方法など。
家庭環境の変化に伴う食文化の進化( レトルトや離乳食 )を、時系列に実寸大で再現しているところは、
今迄の美術館や博物館と違った新しさを感じたところでもありました。

何気なく普段目にするのにも関わらず、見過ごしていたものを、
民俗とし歴史に基づいて展示されると、益々日本人の面白さに深入りしたくなります。

この歴博が明示しているよう、
文化を理解するには、その時代背景にある民衆の思想を知ることの方が、早いのかもしれません。
昨今、価値観の多様化で情報が溢れきっている中、
”研究” といった切り口からシンプルに定義付けている点が潔く、好感が持てました。

またこの歴博は、美術館みたく作者がなくなってから遡り、調査し、推測し、価値のあるモノとして展示されるのではなく、生きている時から、近代市場をコンパクトに振り返っているところがスピーディーさを感じさせ、
私達にとって身近な事としてとらえることができ、親しみの持てる空間となっていました。

ただ、日本の博物館では珍しいくらいに非常~に広い建物ですから半日ぐらいは必要です。
温故知新に民俗学は、おすすめです。
いつになく私たちは文化の中で生きて、また少し異なった文化を創出しようとしている生き物なんだと再認識できました。
都心からは、少し遠いですが30年程を振り返る事ができる新しい博物館なので、
一度足を運んでみても良いのかと思います。

長文お目通しありがとうございました。

石崎

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